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ルービックキューブの商標問題に頭を抱える権利者

1974年の発売以来、世界中で親しまれてきた「ルービックキューブ」は、世代を超えて多くの人々に楽しみと挑戦を提供してきた。特許権による保護が20年の存続期間を終えて失効した後、当時の権利者は保護の延長を図り、2008年から2012年にかけて欧州連合知的財産庁(EUIPO)に複数の立体商標を出願・登録した。

しかし2013年、ギリシャのパズルメーカーVerdes Innovations SAがこれらの商標登録に対して無効審判を請求。EUIPOは、立方体の形状や正方形の配置は技術的な機能を果たすものであり、純粋な装飾ではないと判断。これらの商標は本質的に「機能的」であり、商標法ではなく特許法によって保護されるべきものであるとして、登録は無効であると結論づけた。

2021年にルービックキューブの知的財産ポートフォリオを5,000万米ドルで取得したカナダの大手玩具メーカーSpin Master Toysは、欧州部門であるSpin Master Toys UKを通じてEU一般裁判所に上訴したが、同裁判所はこれを棄却。EUIPOの無効判断を支持する形となった。EU司法裁判所(CJEU)は2025年7月9日の声明で、「その形状のすべての本質的特徴は技術的な結果を得るために必要である」と改めて強調した。

この判決は、象徴的な形状を持つ玩具を展開する企業に対し、特許や意匠として保護されていた権利を商標制度によって延命しようとする試みに警鐘を鳴らすものである。商標法の趣旨と文言に明確に沿わない限り、こうした保護の延長は認められない。言い換えれば、ルービックキューブの表面のシールを貼り替えて色を揃えるような“ズル”は通用しないということだ。しかし、最終的な結論はまだ見えていない。Spin Master Toysがさらに上訴するかどうか、今後の動向が注目される。

参考:Judgments of the General Court in Cases T-1170/23 to T-1173/23 | Spin Master Toys UK v EUIPO – Verdes Innovations

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